皇帝陛下の花嫁公募
第五章 アロイスの求婚と正体
 夜になった。もうすぐアロイスがやってくる。

 彼と会うのは、もう明日が最後かもしれない。いずれにしても、明日結果が出る。皇帝の花嫁になると判っているのに、こそこそ夜遅くに会ったりできないし、花嫁に選ばれなかったら、アマーナリアに帰るだけだ。

 できれば、皇帝でなくても、いい結婚相手を帝都で見つけたかったけれど……。

 アロイスに夢中だったのに、他の男性に目が向くはずがない。

 リゼットは毎夜、彼と会うこの時間を楽しみにしていた。彼はすぐ帰ってしまうことも多かったが、それでもほんの一時でも一緒に過ごせることが嬉しかった。

 でも……もうお別れを言わなくてはいけないんだわ。

 淋しさがリゼットを襲う。

 どんなふうに切り出したらいいだろう。嘘はよくないから、やはり花嫁の最終候補に選ばれて、更に皇帝に選ばれたら結婚することを話さなくてはいけない。

 いつものように夕食を摂った後、ナディアの手を借りて夜着に着替える。そして、化粧台の鏡に向かって座ると、ナディアが後ろに立って髪を梳いてくれる。

 ナディアはリゼットが最終候補に残れたことが誇らしいらしく、やたらと機嫌がいい。そういえば、祖父もそうだった。

『おまえが他の娘達に勝てるなんて思わなかったが、意外とやるじゃないか。最終候補に残るとは大したものだ。たとえ皇帝に選ばれなくても、これでいい縁談が来るぞ』
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