明治、禁じられた恋の行方
8.見えてきた真実

ーごめん。


あの夜、激しいキスに乱れた息を抑えながら、志恩は言った。


まだ、どくどくと心臓が激しく鳴るのを感じながら、
本当は、千歳は聞きたかった。


なぜこんなキスをしたのか、
自分のことをどう思っているのか。


でも・・・


その謝罪の言葉で、全て飲み込む。


ごめん、


ごめん、って、何だろう。



経験も無く、これまで、恋愛についてなど考えて来なかった千歳には、胸の高鳴りも、痛みも、初めてのことだった。




そうだ、そもそも、私は借金だらけで、あくまで契約でこの家にいるだけの人間。



一時的に利用するための道具・・・



だから、ごめん、か・・・



ズキズキと胸が痛む。



あぁ、私は何て愚かなんだろう。



復讐、復讐と言いながら、
私はこんな所で、恋をしてしまっていたんだ。



でも、志恩はきっと、そんなつもりじゃない。



「さっきのは、無かったことに・・・して。」


そう言い捨て、
パタパタと部屋に戻った後には、呆然とした志恩だけが残された。

< 47 / 97 >

この作品をシェア

pagetop