夏が残したテラス……
好きってこと
本格的に夏が始まり、美夜さん、高橋君と三人でもランチの時間はバタバタだった。
 ほっと一息できたのは、夕方も五時を回る頃だった。


「ふ―う」

 三人で、テラスの椅子に腰を下ろした。

「さすがに疲れたわ。それにしても、ランチの評判いいわね」

 美夜さんは、テーブルの上のアイスコーヒに手を伸ばした。


「トマトパスタやオムライスは、海の家じゃ食べられないし、海に入らずドライブ途中の人も多かったな」

 高橋君も、疲れた表情のまま言った。

「今、人が入らなきゃ家の店潰れちゃうよ」

「そりゃそうだ。でも、奏海腕上げたね。さっき、残っていたトマトソース味見したけど、あれなら人も入るわ」


「ありがとう」

 やっぱり、褒められれば嬉しくて口元が緩む。


 海岸には、昼間のような賑わいは無くなったが、まだ、ちらほらと海を楽しむ人の姿がある。

 隣のリゾートホテルからは、夕方のまったりとした雰囲気が流れていて、地元に住む私でさえ気持ちが和む。


「ふう―っ。ごめん、今日、親戚が集まるみたいだから、私これであがるね。明日も手伝いに来るから」

 美夜が椅子から立ちあがった。


「ええ、いいの?」


「勿論よ。その為に帰って来たんだから。今日は忙しくて潜れなかったし、明日ね」


「ありががとう」

 私にとって、美夜が居てくれる事は本当に心強い事だ。

 私も、椅子から立ちあがり、美夜を見送った。
< 31 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop