愛と約束
好きと涙



「井上がこの度、寿退職することとなった。送別会は今度の―……」


ああ、いいな。


私も、赤ちゃん欲しい。


空っぽのお腹を抱き、私は悲しみに充ちたせいで広がった黒い感情に嫌気がさす。


家に帰ってもまた、変わらない日々。


仕事人間なあの人には、届かない私の声。


愛して欲しい。


愛して欲しい。


その願いは、全て、切り捨てられてしまうの。


『子供欲しいな』


私がそう言えば、


『俺も欲しいよ』


そう返してくるくせに。


私が欲しいのは、あなたの子供。


なのに、あなたは口ばかりで、私を抱かない。


昔は、あんなにも求めてくれてたのに。


キスもしない。


身だしなみをきっちりして、朝も私の作ったご飯をまともに食べずに、仕事に出かけるあなた。


声すらかけられなくて、毎朝、孤独なのわかる?


仕事と私、どっちが大事?


とか、聞くつもりは無い。


でもね、怖いよ。


あなたに愛されてないということを、最近、敏感に感じる自分が怖い。


< 3 / 37 >

この作品をシェア

pagetop