さようなら、初めまして。
・残り3日に…
…はぁ…。あれ以来、ジンさんに会っていない。アキちゃんとも連絡をしていない。
私は卑怯だ。

カチャカチャ、カラカラ…。ん?紙?

『これ、携帯の番号
XXX-XXXXXXXX  一神 誠』

…あ、これ、一神誠って…ジンさん?
引き戸を開けたら、玄関に二つ折りの紙が広がって落ちていた。
…いつ来たんだろう。

差し込んだのだろう。引き戸はぴしゃりと隙間なく閉まらないから。
ポストだとうっかり見ないかも知れないと思ったのかも知れない。
だとしたら、今朝部屋を出てから今までの間って事だ。

…。

携帯を取り出した。
番号を入れた。

…。

はぁ…。コールしていいものか、入力して戸惑った。

…。

まだ7時前…。

コールはせず、帰って来た道をまた戻った。少し速足になった。…駆けていた。

…はぁ…ジンさん。


…居ない。待ってるって言ってた…。多分それはここの事だ。
ううん…だけどそれも限度ってモノだ。
何もかも…、一方的にキャンセルしたのは私だ。それを…居るんじゃないかって…虫が良過ぎる。
自惚れにも程がある。
あれからずっと来てくれていたとしても、何日もずっと居ないなら諦めてしまうだろう。だから。
もしかして…悠人との事がある。それを話したから。会えなくて心配してはいけないと、この番号を…。じゃあ…連絡した方が…。

…。

ずっと考えていた。
悠人の事。ジンさんの事。
ジンさんは私の言葉を守って、というか、日曜には来なかった。私もケーキは焼かなかった。

考えた…考えても何だか…それでも答えは出なかった。だから、キャンセルだと言ったまま、ここにも一度も来てみなかった。

…もう、…遅かったんだ。
都合いい行動過ぎる…。
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