死にたがりティーンエイジを忘れない
三 高校時代前半:転落と逃避行

わたしは美しくないから



高校生活は、入学前からつまずいていた感じがある。

入学式より前におこなわれたオリエンテーションで早速、課題のテキストが配られた。

三教科の、中学のおさらいと高校の予習。


数学の課題は、文系理系の特進クラスだけ特別仕様だった。

中学の範囲は全部できることが前提の、高校で習う範囲の予習課題だ。


因数分解の練習問題が、計算の遅いわたしにとってはあまりにも多かった。

公式の意味だとか効率的なやり方だとかが全然わからないまま、ちまちまと進めたけれど、ギリギリまで終わらなかった。

見直しなんて、とてもじゃなかった。


ひとみと雅樹の引っ越しの手伝い、制服の採寸、教科書の購入、そして入学式。

日山高校は一学年四百人の規模だから、琴野中のころよりも大人数だ。

体育館に詰め込まれた人混みのすさまじさに、めまいがした。


入学式が終わって、ホームルーム。

担任は、目つきのきつい美人の英語教師。

誰の名前も覚えられない単調な自己紹介があって、課題の回答が配られた。


担任が命じた。


「課題は明日までに答え合わせとやり直しをして提出すること。明日から授業が始まるけど、各教科で予習用の課題が配られるはずよ。
予習をおろそかにすると、授業の内容に付いていけない。一年の一学期から落ちこぼれる生徒も毎年いるからね。しっかりやりなさい」


ここは軍隊なんだな、と思った。


< 108 / 340 >

この作品をシェア

pagetop