死にたがりティーンエイジを忘れない

その絵は完成しなかった



夏休みに入るまでに、担任が何度か家庭訪問に来た。

そのうちの最後の一度は、同じクラスの人を三人、連れてきていた。

家が近所らしい。

担任がわたしの親と話す間、三人はわたしの部屋に来て、あれこれ楽しそうにおしゃべりをした。


おしゃべりの内容は、相変わらず、悪口と陰口と下ネタの恋バナ。

わたしは口を挟まずに、あいづちすら打たずに、黙って聞いていた。

本当は耳をふさぎたかった。


担任は無神経な男の先生だった。

帰り際、お節介なクラスメイトたちを示して、わたしに言った。


「一緒に登校すればいい。朝、迎えに来てくれるそうだ」


わたしは丁重にお断りした。

自分で学校に行けると言った。

その言葉を嘘にしたくなかったから、かなり具合が悪い朝も無理やり登校した。


終業式の最中、体育館の蒸し暑さと人混みの密度のせいで、耐えられなくなった。

列を離れて、トイレに駆け込んで、吐いた。

そのまま教室からエスケープして、通知表はホームルームが終わった後、保健室で受け取った。


通知表を開いてみると、一学期の出席日数は規定ギリギリだった。

五教科の評定はオール5。

副教科は4だった。

所見欄の文章は、読む気がしなかった。


何はともあれ、どうにか夏休みに入った。

ホッとした。


急に視界に明かりが差したように思った。

頭も胸も重苦しい闇にふさがれていたのが、突然、もとに戻った。


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