私は強くない
私は強い…?
誰の話をしてるんだろう?

拓真?
私の知ってる拓真の事?
何度自問自答しても、答えは見つからなかった。

どれくらい、時間が経ったんだろう。
誰かが口を開いた。

「…で、陽一は奥菜になんて言ったのよ」

美波が、金谷君に聞いていた。
金谷君はどこから話をしていいのか、戸惑った様子で、口ごもった。

「いいのよ、金谷君。はっきり言ってくれても」

そう、もうはっきりしてくれた方がいい。
傷つくのは、もうこれが最後でいい。

「はっきりしないから、問い詰めたんだ。拓真を。あいつ、もう終わった事だって言ってたのに、そうじゃなかったんだ。一回は本当に、あの合コンの時に終わってたらしいんだけど、相手の子からの連絡が凄かったらしくって…」

若い子からの押しに負けたって事?
若い、っていいね。
自分が思うがままに突き進んで、行けるんだから。
金谷君の話を、どこか他人事のように聞いていた私。そんな私を心配そうに、美波が、気にかけてくれる。

「大丈夫ですか?慶都さん。私、もう我慢出来ませんよ。あまりに酷くないですか?!」

うん、ひどいね。
ひどいよ。ひどいけど、引き留めておけなかった私にも、原因があるのかも、と思ってしまう。
けど、男の人って、みんなそうなの?と聞きたくなる。

私と美波を交互に見ながら、金谷君が続ける。

「…で、いつの間にか慶都さんと、二股してたって、聞かされて、あげくに妊娠?何やってんだ!って、殴りましたよ、拓真を」

妊娠ね。
強いよね、そんなの妊娠したもん勝ちじゃない。
堕ろせなんて言える訳ないじゃない。
私も、そこまでひどいオンナになりたくない。

「な、なに?妊娠てなに?」

金谷君の言葉に、美波はまた大きな声で叫んだ。あ、そう言えば美波には相手が、妊娠したって事、話をしてなかったんだ。

「慶都さん!奥菜の奴、あいつクズですよ。人としてあり得ない。信じられない!」

「私も聞いてびっくりしたよ。一体誰の話してるんだろう?ってね。けど、別れても私が強いから1人でも大丈夫って、言われたら…どう返していいかな分かんなかったよ。私を何だと思ってるの、ふざけんな!って思ったよ」

勝手に私の事を決めてる所に腹が立ち。二股されてた事に気がつかなかった事に腹が立ち。いろんな感情が入り乱れてた。

金谷君も美波も、黙って私の話を聞いてくれていた。

「ねぇ、浮気ってどこからが、浮気になるんだろうね。本命だったのに、いつの間にか本命から外されてるってなんなんだろうね」

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