私は強くない
恋ですか?
慌ただしく、出かけて行った2人を見送った。

「名取課長、どうします?」

「そ、そうだな。どうしよう…か」

急に2人っきりにされて、どうしていいものか、困った。

「あの…」
「あの…」

え?
2人同時に話出した。
お互い顔を見合わせて、声に出して笑った。

「なんか、変な感じだな…」

「はい。あの、名取課長」

「ん、なんだ?」

あ、あの…
なんて言ったらいいんだろうか。

「迷惑じゃなかったですか?電話で呼んだりして…」

「なんで、迷惑になるんだ?俺を頼ってくれて、嬉しかったよ。さっきも言ったけど、帰さなきゃよかった、と思ったよ。奥菜と倉橋を見た時な」

「…っ」

名取課長の優しさが、心を締め付けた。
こんなに、名取課長に優しさを私がもらってもいいんだろうか。

「倉橋」

「え?」

名前を呼ばれて顔を上げると、名取課長が私の前に、そしてしっかり抱きしめてくれた。
頭を撫でながら、

「怖かっただろ。もうこんな思いはさせないからな」

「名取課長…、いいんですか?私、甘えてもいいんですか?」

「何言ってるんだ。倉橋だからいいんだよ」

強く、強く、抱きしめてくれた。


………

「ね、陽一」

「ん?どした?」

「名取課長って、絶対慶都さんの事好きだよね?」

「え?お前知らなかったのか?結構前からじゃないか?」

「うそ?」

「だって俺がAGにいる頃からだと思うぜ」

「え?ほんとに?どこまで、名取課長って純情なの。あれだけモテるのに」

「まぁな」

「慶都さんの心助けてくれるかな」

「あの人に任せてたら大丈夫だって」

「だよね。うん」

美波と陽一は、慶都と名取課長の話をしながら、拓真のマンションへ向かっていた。

20分ほどして、拓真のマンションに着いた。

陽一は、拓真の部屋のインターホンを押した。

「…はい」

「俺だ 」

少しして、玄関が開いた。
中から、暗い顔をした拓真が出てきた。

「なんの用だよ」

「お前の荷物、慶都さんから預かってきたんだ」
「ついでに、慶都さんの荷物受け取りに来たの」

陽一の後ろから、美波が出て話をすると、

「木村、お前も来てたのか」

「本当だったら、あんたの顔見るのも嫌だけどね。同期として情けないわ、慶都さん傷つけて。許さないからね」

「俺も、美波と同意見だ。最低だよ、拓真。先に浮気したのはお前だろ」

「………」

拓真は黙ってうなだれていた。

「陽一、俺どうしたらいいんだ」

「何がだよ!」

「名取課長がキレたんだ、怒らせてしまった。会社どうやって行ったらいいんだよ!」

「俺が知るか。けど、この荷物持っていけ、二度とお前と関わるなって慶都さんに言ったのは、名取課長だからな。男として、許さないってさ。まぁ、謝るんだな、慶都さんに。それしかないだろ」

「っ…」

拓真は事の重大さに、気づいた。
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