独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
3.話し合い
写真も無事に撮り終えて、後はご両親との面談だけだと少しほっとしながら、いつもの日常を過ごしていた。

せっかく島木さんに教えてもらったヘアアレンジや簡単な化粧も気恥ずかしくてできずにいた。
副社長に見つかったら、小言か嫌味を言われるかもしれないけれど。切ってもらった髪は無難にいつも通り、首の後ろでひとつに結っている。

彼の両親との面談の日はまだ決まっていない。
怒涛の出会いから三日が経った日、副社長から連絡があった。

終業後に強引に迎えに来た副社長は、挨拶もそこそこに柿元さんが待つ車に私を押し込めた。それから苦い表情を浮かべて話し始めた。

「厄介なことになった」
「何がですか?」
言われている意味がよくわからず問い返す。

そもそもいきなり会社の前で待ち伏せとかしないでほしい。私に先約があるとか考えないのだろうか。

今日は残業もなく、ひとりで出てきたからよかったものの、梓や千夏ちゃんに見られたらどうするつもりなのだろう。この人は大企業のトップに近い位置にいるくせに、危機管理意識がないのだろうか。

「この間、公園で写真を撮っていただろ。それを偶然うちの取引先の令嬢が目撃したらしい」
ものすごく不機嫌な顔で彼が話を続ける。

「そいつが俺に恋人がいるのでは、と邪推して周囲に吹聴したんだよ。しかも会社に乗り込んできた。おかげで朝から親父にも記者連中にも詮索されて」
「社長は大変喜ばれていて、すぐにでも都筑様にお会いしたいとおっしゃってまして」
困り顔で彼の言葉を補足するように柿元さんが言う。

「というわけでほとぼりがさめるまではお前は俺の婚約者な」
彼の宣告が非情なものに聞こえた。
< 33 / 158 >

この作品をシェア

pagetop