独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
6.婚約者の意味
結局買い物に連れ出され、あちらこちらと引っ張りまわされた。柿元さんも呼ばれるのだろうと思ったのに彼だけだった。

しかも彼が運転する車に強引に乗せられてしまった。抵抗していたら、大輝の車には乗ったのに俺の車には乗らないのかと追求されて睨まれた。

私を今日ここに呼び出した柿元さんの所在を尋ねると、なぜか不機嫌な表情を向けられた。今日はずっとふたりきりなのかを聞きたかっただけなのに。

大輝さんとは違うけれど、これまた期待を裏切らない高級外車。黒のSUVが堂々と眼前に現れた時にはもう、あきらめの境地だった。

自分で運転するの、と思わず尋ねた私に当たり前だろ、と彼は言う。私の質問を馬鹿にするでもなく、いちいち面白がりながら返答してくれる彼。
『副社長』としてではなく、ひとりの男性としての姿が私にはとても新鮮だった。

買いすぎることには閉口したけれど、買い物の最中、彼は私の意見もきちんと聞いてくれた。この時間は意外なほど楽しかった。買ってきたものを今すぐ必要なもの、それ以外のものを分けて配送準備をしたり、テキパキと彼は判断を下していく。もちろん支払いは一切受け付けてくれなかった。

もちろん周囲からの視線は凄まじかった。通り過ぎていく人も皆、一度は彼を振り返る。なかには足を止めて凝視していく人もいた。スーツ姿でもなく、会社にいるわけでもないのに、この人は大勢の人を惹きつける。

その姿が眩しくてなぜか胸が痛んだ。
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