五十嵐さんは毎日連絡をくれる、まめな人だった。仕事の休憩時間に、送ってくれているらしい。「熱中症に気を付けて、おやすみ」とか、「バイトお疲れさん、おやすみ」とか。素っ気ないというより、さりげないと言えばいいのか。気取ったところがなくて、いつも自然体の彼に、急速に惹かれていく自覚はあった。 


土曜日。逆さまのてるてる坊主のおかげか、午後から強い雨になり、花火大会は日曜日に順延されることになった。
ホームページでその情報を確認できた時は、部屋の中でひとり嬉しくて飛び跳ねてしまった。私とは逆で、土曜日にしか行けない人には申し訳ないけど。

簡単な夕食を作って食べ終えると、いつも五十嵐さんがメッセージをくれる時間が近づいてくる。スマホ片手にうずうずと待っていると、聞きなれた短い通知音ではなく、着信音が鳴りはじめる。ディスプレイに表示されている文字は「五十嵐新」だ。

「わっ、わっ!」

最近は、友人とも通話ではなくメッセージアプリばかりだったせいか、久しぶりの着信に私は慌てた。
2コール目には、反射的に通話ボタンを押してしまう。

「も、もしもし!」

即、応答のハリキリ声がちょっと恥ずかしい。待ち構えていましたって、伝わってしまっただろう。

「……こんばんは。五十嵐だけど」

電話の向こうで笑われている気がする。でも、五十嵐さんは余計なことは言わなかった。

「明日、11時頃に迎えに行くけど、大丈夫?」
「もちろんです」
「一緒に昼飯食べて、ちょっと時間つぶして、花火を見ようか」

やっぱり一緒に花火を見に行ってくれるつもりだったんだ。約束した時にはっきり場所を口にしなかったのは、天候次第だから……きっと私をがっかりさせないためだ。

「あの、何か持って行くものありますか」

花火会場の河川敷に行くのなら、レジャーシートは絶対必要だし、食べものや飲み物をクーラーバッグに入れていくのもいい。