二人で都心まで出て行ったら、時間はちょうどランチタイム。
電車の中で「お肉が食べたい」と言っていた五十嵐さんの提案で、ローストビーフが有名な老舗の洋食店に予約を入れた。
じっくり時間をかけて作られただろう、きれいな赤身のローストビーフとマッシュポテト、それにロメインレタスのシーザーサラダを食べて、空腹を満たす。
 
食後のコーヒーを飲みながら少し休んで、近くの有名デパートまで足を運んだ。

デパートのグランドフロアは、いくつかのインポートブランドと、コスメ、女性物の小物が並び、とても煌びやかだ。
私は若い女性がターゲットの百貨店や、ショッピングモールにはそれなりに足を運ぶが、都内の一等地に立つこういった店は、数えるほどしか訪れたことがない。

ひとりなら、入って品物をみるだけで緊張してしまうけれど、今日は五十嵐さんが一緒だから心強かった。

このデパートには香水専門の売り場が設けられていて、そこにはCMやコスメショップでもあまり見かけない、私がはじめて見るメーカーの商品がたくさん並んでいた。

「さすが、デパートですね」
「このあたりは、パフューム専門のブランドなんじゃないかな? 昔俺が使ってたやつもある」
「……昔?」
「大学出たあと最初の二年だけね、商社勤めしていた時期がありまして。その頃は普通に使ってた」
「どこの香水を使ってたんですか?」

私は俄然興味がわいた。過去の五十嵐さんと何かを共有できたら素敵だと思ったからだ。

「これ、イギリスのものなんだけど」
「わー、かわいい」

同じような円柱型の瓶が、たくさん並んでいる一角に案内される。デザイン性のある、最先端のファッションブランドのものと違い、クラシカルでシンプルな瓶に、違う色のラベルやリボンが巻かれている。