テレビの感想文
あれはおそらく、父が倒れ、家族が病院に呼ばれたときのこと。

記憶は、暑さで頭がぼーっとしているところから始まる。
自分が座っているすぐ横に、白い四角いものがあることに気づき、これのせいで暑いのだと理解して、廊下に出た。
上も下も白い廊下。その向こうに、左を向いて立っている母がいた。母のいるさらに奥には、四角いガラスがタイル状にはめこまれていて、そこから出ている光に照らされている。

そんな母に近づかず、眺めている、という記憶がある。
かなりうっすらとしか残っていない記憶だ。

おそらくあの暑かった部屋は待合室で、母が見ていたのは、父が処置を受けている部屋だった。

私が5歳のとき父は亡くなった。くも膜下出血で、当時、CT写真を見た叔母は、真っ黒になった父の脳内の写真を見て、「これはもう助からない」とショックを受けたという。

そんなわけで、私と父との思い出は少ない。
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