当たり前です。恋人は絶対会社の外で見つけます!
知らなかった優しさは、年上だから。
お店を出てドタバタとお金を押し付け合い、怒られるようにお金ごと手を掴まれて引っ張られてこうなりました・・・・。
確かに意地を張って声も張って・・・、お見苦しい場面を通行人に披露したみたいで。

それは反省。


ご飯は済んでたのでお酒を飲みに行こうと連れてこられて、文字通り連れてこられたお店。
1人では絶対入らない。入れない。
小さなビルの5階。
それだけでドキドキする。
中が覗けないお店に入る勇気はなかなかない。


こじゃれた若い男の人が経営してます・・・みたいなダイニングバー。
さっきからシャカシャカと音がして飲み物を作ってくれてる。
そのスタイルはキャップに白いシャツにジーンズ。
俺流です、みたいな自由さ。
周りはカップルが多いけど、女性同士もいる。
誰と来たんだろう?

まあ、いいけど。

よくないことは先に決めよう。

「あの、これでお支払いをお願いします。」

二杯くらいは余裕で飲めるだろう。
食事はいらないし。
料金分飲んで帰りましょう、いざ週末の自分の部屋へ。


特別に何が待ってるわけでもないですが、・・・・部屋が待ってます。リラックスする時間も。


「ああ?」

不機嫌そうな声をあげられてお金を小さく折りたたんで胸のポケットに入れられた。
思わず離れてお金がポロリとテーブルに落ちた。

何するの!セクハラです!!
軽く胸に手を置いて離れた。

「あ、悪い。ポケットしか見てなかった。本当に悪かった。」

いつもよりきつく睨んだら、びっくりした後すごく謝られた。

「びっくりしただけ。」

そう言うしかなかった。
落ちたお金を広げる。

折り目が増えたお札が三枚。

「奢るから。さっきのもいいよ。ちょっとくらい付き合ってくれても良くない?」

顔を見ると普通にお願いされてる気がする。
もしかして本当に振られた?
携帯を気にするそぶりもない。

可哀想になってきた。
しょうがないと思うことにした。
少しの時間なら、付きあおう。

「私は食べたけど、食べてないんじゃないの?」

「ああ、お腹空いてる。なんか頼むから、食べたいものは?」

「お腹いっぱい。」

そう言いながらも差し出されたメニュー表を見る。

ああ、美味しそう。
ちょっとあのコーヒー屋さんでの贅沢を後悔してしまった自分。
いや、そんな事はない。ゆっくり美味しくいただきました。
こんなことになるまでは。

でもなぜか、視線が・・・・。
美味しそうな文字の羅列に引き寄せられる。

最終的にデザートのところをウロウロしてしまう。

「デザートは後にしてくれる?」

バレたらしい。

メニュー表を取り上げられて店員さんを呼んで勝手に注文してる。
勝手に・・・なんて言えないけど。

お酒も美味しい。
やはりシャカシャカと作ってもらうとそれだけで満足する。
量が少ないから大切に飲む。

美味しい!

「美味しいだろう。そんな顔されると連れてきた甲斐がある。」

笑顔で言われた。
何でそんな笑顔なのよ。振られて悲しいはずなのに?

あ、行けたら行くって言う約束で、最初から無理だと思ってたとか?
だから今日は残念なキャンセルで、決して振られたわけではないとか。

まあ、どうでもいい。
私の耳には届かないくらいのゴシップということで、きっと小粒のネタなんだろう。


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