一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
溺愛スキャンダル

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成田空港の展望デッキ。
搭乗までの時間をつぶす人々が集まっている。

世界に飛び立っていく飛行機を見つめる久我樹は、わずかに目を細めて息を吐いた。


「…ここに居たんですね。わざわざ呼び出されたのに、広すぎて会えないかと思いました。」


そんな言葉に振り向くと、そこにはダークスーツを着た瀬戸の姿があった。

樹は、静かに彼へと答える。


「フライト前に会えてよかった。瀬戸とは一度、ちゃんと話したいと思っていたから。」


「へぇ…、それはどうも。」


コツコツ、と樹に歩み寄った瀬戸は、静かに眉を寄せた。


「見送りは、俺だけですか。」


「あぁ。桐生も今はロサンゼルス支部に連絡をしに行っててね。…ホテルの奴らには何も言っていないし。」


すると、瀬戸は視線を逸らさずにぽつり。と呟く。


「桜庭にも、何も言わないんですか。」


樹の表情がわずかに変わった。しかし、一瞬目を見開いた彼は、そっ、とまつ毛を伏せて答える。


「美香のことは縛りたくないから。いつ帰ってくるか分からないような俺のことを無責任に、好きでいてほしい、なんて言えないし。」


ざわざわと人の声が飛び交う展望デッキ。一瞬、二人の間の空気が張り詰めた。

はっ、とした瀬戸は、数秒の沈黙の後、真剣なトーンで樹に尋ねる。


「それはつまり、桜庭が他の奴を好きになってもいい、ってことですか。」


「…!」


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