一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
三度目のキス

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「桜庭さん。これ、久我マネージャーからです。」


勤務後、午後七時。

事務室に現れた桐生さんに手渡されたのは、綺麗な装飾の施された鍵だった。

私は、その鍵を見て目を見開く。


「あの、これ、部屋番号が書いてませんが…」


「当然です。スイートルームですから。」


開いた口が塞がらない。桐生さんの「当ホテルのハウスキーパーなら、それくらいご存知でしょう。」なんてお小言も、さらり、と流せるくらいの衝撃だ。

ほとんど放心状態でエレベーターに乗り込み、部屋の前まで来ても信じられない。

恐る恐る鍵穴に差し込むと、ガチャ、と重厚感のある金属の音がした。やっぱりこの部屋で合ってるんだ、なんて安易な感想しか出てこない。


ーーキィ。


扉を開けると、そこはまるで夢の国だった。いつもの築二十年1LDKのマンションとは桁が違う。

お洒落な透明のテーブルに、ふかふかのソファ。色彩の整えられた絨毯とカーテン。

繊細な装飾が施されたランプの近くには、どんなに寝相が悪くても落っこちないだろうと思われるキングサイズのベッドがある。


(まさか、いつも手入れをしている部屋で泊まることになるとは…。)

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