大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
また会うなんて

なんなのー

あいつの前で平常心を保っていたが、一気にパニックになる。

地元を離れ短大での一人暮らしの気楽さを覚えた私は、戻って来ても一人暮らしを続けていた。その二階建てアパートの階段を駆け上がり、部屋の前でカギを探すが、なかなか見つからない。

あーもう…どこ?

鞄の奥底からやっと出てきたカギで開けて、履いていたヒールを無造作に脱ぐと一直線にスタンドミラーの前に立った。

手に持っていた荷物をその場に落とし、後ろのファスナーを下ろしてドレスを脱ぐと、鏡に映った自分の体には、いくつもの赤い痕が花びらのようにあちこちにちっているのだ。

何度見ても、キスマークでしかない。

デコルテから胸にかけて、そして背中や、内股にまで…

なんでこんなにたくさんついてるのよ。

もう、なんなの。

一回きりの相手にあの男は何をしてくれたんだろうか!

これじゃ、明日からしばらくは、襟ぐりの空いた服なんて着れやしない。

行き場のない感情を持て余し、はぁーと、鏡の前でうなだれた。

酔っていても、情熱的に抱かれた記憶はある。

だから、余計にタチが悪い。

最悪なことに、鮮明に覚えているんだよね…
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