私の好きな人
第1章


出会いは8歳の時


父親の転勤で引っ越してきた私は、8歳ながらに新しい環境に不安でしかなかった


小学校でできたばかりの友達との別れ


小学2年生にしてはツライ経験だった



『ここが彩月の新しい学校だよ』


そう優しく微笑むお父さんに愛想よく返事したっけ…



転校前日にご近所へ挨拶回りをした



引っ越してきた地区は子供が少なく、何軒か隣の家に1人いるだけって聞かされ


その家にも挨拶に行った


ふと表札を見る

“藤”…珍しい名前…


これが第一印象


『先週引っ越してきた森岡と申します。娘共々よろしくお願いします。』


お父さんは柔らかい笑顔でそう言った


『ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。』


その家のお父さんであろう人も優しい笑顔だった


『ほら彩月も、ちゃんとご挨拶しなさい』


『はい…』


『良平ー!新しいお友達がご挨拶に来てるから、ちょっと来なさーい!』


ドキドキした


今でも覚えてる


心臓が飛び跳ねるほど緊張して、気持ちが悪いとさえ思った


両親の後ろで隠れてた私はゆっくり前に移動し、顔を上げることもなく


『はじめまして。森岡彩月です』


精一杯だったな


『どうも…藤良平です』



男の子だ…


女の子の友達が欲しかった私は少し肩を落とした



なんだかはじめは緊張と不安とで、あまり記憶にないけど


これが良平との出会い




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