王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
知りたい
アーノルドの城ではオリヴィアがいなくなったと大混乱だった。

オリヴィアはアーノルドの婚約者。王太子の婚約者の失踪はとんでもない混乱を引き起こしていた。

その中で只一人、アーノルドはいたって冷静だった。

口を閉ざし、眉間に皺を寄せて考え続けていた。

アーノルドにはオリヴィアの居場所は大体検討がついていた。門番の話からも城の外へ出たことは分かっている。おそらくは自分の領地アンスリナへ向かったのだろう。

あれほど自分の領地が大好きな娘が、領地に災害が起これば居ても立ってもいられなくなるだろう。

そのことについてはアーノルドも仕方の無いことだとは分かっていた。

ただ腹が立つのは、オリヴィアが何も言わずに城を飛びだしたことだった。

少しでも頼ってくれたら良かったのに。それに、こんな危険な状況で自分の立場が分かっているのか。何かあればどうするつもりなのか。

そんなことを考えながら各所からの報告に目を通していた。


「おい、ダルトン伯爵とは連絡が取れたのか?」

「いいえ。ダルトン伯爵の王都の屋敷に掛け合いましたが、伯爵は留守のようでした。少し前に出かけたと」

「出掛けた? 自分の領地へでも向かっているのか?」


ダルトン伯爵とは何度か会って話をしたが、オリヴィアとは全く違う性格をしている。領地の森が燃えた程度で自身の領地に向かうだろうか。

そんなことを考えていると、「被害状況の報告です」とまた伝令がやって来た。


「ダルトン伯爵のお屋敷も燃えたようです!」


その報告に周りにいた役人達もざわめいた。

ダルトン伯爵家の領地は国境の地。それも西の国との国境だ。これはきわめて危険な状況かもしれない。


「クソ」


それなのに、あの娘はあの地へ向かったというのか。本当に考え無しのやつめ。


「アーノルド、ちょっといいかしら」


情報が飛び交う中、姉・ディアナが声を掛けた。


「何です、姉上。このような時に」

「苛立たないで。こんな時だから、あなたに伝えなければならないの。私がここへ来た理由と、西の国の状況を」


姉から伝えられた事柄は想像を絶するものだった。

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