一途な彼にとろとろに愛育されてます



服を着て部屋を出ると、顔を洗って目を覚ます。

亜子は朝があまり得意ではなく、俺の方が早起きだし、アラームを聞いても起きることはない。

ひとりで身支度をして、亜子より先に家を出るのが当たり前だ。



それは付き合ってからも変わらず、今日も俺はひとり支度を終え車で自宅をあとにした。





同期で入社した亜子の最初の印象は、よく笑う女、だった。



本人は覚えていないだろうけれど、入社式の日も廊下で他の奴とぶつかっていたことがあった。

その時も自ら『ごめんね!』と笑って去って行った。



同期数名で集まっても、俺と彼女自身に直接会話はなく、他の人と話す彼女を見ていることが多かった。

その時も亜子はよく笑って、人の話を聞く時はちゃんと目を見て頷いて、愚痴には共感したり時には意見をしたり。

喜怒哀楽のよく現れる人だと思った。



いい奴なんだろう。けど、にぎやかなその雰囲気が少し苦手だ。

悩みなんてなさそうで、落ち込むこともなさそうで、ラクでいいな。なんて、どこか冷めた目で見る自分もいた。


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