その悪魔、制御不能につき
◇死ぬかと思った



死ぬかと思った。


社長に初めて連れ込まれたときもこれはやばいぞと危機を感じたけどそれが甘っちょろく感じるぐらい今回は本当に死ぬかと思った。もう、体中がいろいろと酷使されて頭も疲れて精神的にも疲労が。


空腹はすごいのに指先一本ですら動かすのが億劫で声も掠れて出ない。よく本とかで腹上死とか書いてあるのを見てそんなんで人間死ぬわけがないだろうと思ってたけど……あれってファンタジーじゃなかったのね。


瞼を開けることすらだるい、とある意味でベッドの住人になってぐったりしていると体を抱き起こされて唇に冷たいグラスが触れる。そっと口を開けば冷やされた水が流れてきて喉を潤した。


目を開ければシャワーでも浴びていたのか髪の毛から落ちる雫が冷たい。伏せがちに見つめられる瞳にはまだ艶があるものの私がそれに応える気力も体力もないことをわかっているのだろう、軽く…いや、軽くなかったけど、すごい濃厚なやつだったけど口付けられるだけだった。



「輝夜、」


「……ん、なに?」



社長に抱えられるように座り、遠慮なく背中を預ける。というか私だけ裸なんだけど。せめてシャツか何か貸して欲しい。


相変わらず親鳥のようにせっせと口元に食べ物を運んでくる社長に言っても無駄だな、と諦めつつ大人しく与えられるものを食べる。羞恥心はすでにないし慣れたし、そもそも体力が底をついてるのでもういいやという感じだ。



「しばらくここにいてほしい」


「は…?仕事は?それに私だいぶ休んでるからそろそろ戻りたいんだけど」


「駄目だ」



被せ気味に返された拒否に思わず眉間に皺が寄った。私が仕事にやりがいを感じていることを知っていての発言だろうか。



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