その悪魔、制御不能につき
◇あーあ、嫌になっちゃうわね



………体が痛い。ついでに床の上に適当に投げ出されてるようで体が冷えてる。身じろぎすると痛みで声をあげそうになったけどなんとか耐えた。後ろ手に縄か何かで拘束されているようね。足はされていないみたいだけど、靴履いてないし…


一度体から力を抜くと金属が擦れる音がして人の気配と音が耳に入ってくる。この展開から予想はしてたけど、どうやら私、攫われたらしい。それも驚きだけどあのセキュリティーどうやって突破したのかも気になるわ。


犯人として考えられるのはやっぱり社長の関係者よねぇ…私個人として恨まれるような覚えはないし。一番可能性として考えられるのは私が監禁、もとい保護された元凶かしら。名前知らないけど、あの社長や都築さんに嫌われてる彼女ね。



「いい女だよなァ…これ、終わったら好きにできるんスよね?」


「さぁな、オレらが依頼されたのはここまでだ。そんなに気に入ったんなら後で聞きゃあいいだろ」


「つまみ食いは、」


「痛い目にあいたくなきゃやめとけ」



ちぇ、なんて舌打ちが聞こえたけど男の片方ナイスである。こんなところで好き勝手ヤられるなんてこっちも御免被る。考えるだけで嫌悪感で鳥肌が立つし、社長のことも考えると…酷い目に合う未来しか見えない。


窓もないこの部屋ではどのぐらいの時間が経ったのかもここがどこらへんなのかもわからない。せめて窓があれば逃げられたのかもしれないのに…まぁ普通に考えて私を1人にするわけがないか。


ぐっ、と無意識のうちに唇をきつく噛みしめる。私は大抵のことには動じない方だと思ってるけど、こんな非日常的である意味ドラマティックなことに恐怖を感じないわけがない。こちとら平穏な日常を送る一般市民なのよ。


必死で冷静に物事を考えようとしても本能的な恐怖は後から湧いてきて、気を抜けば震えそうになる体を抑えるために不自然ではない程度に力を入れた。



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