セカンド・プライオリティ
気持ちを言葉に変えること SIDE涼

その日、帰宅すると見覚えのある女性がリビングにいた。

「あ、こんばんは。お邪魔してます」
「えーっと…」
「あぁすみません。美己と一緒に仕事をしています、森です」
「あぁそうだ、森ちゃん!こちらこそすみません、すぐにお名前思い出せなくて」

あれ、でも美己は?

「美己なんですけど」
俺の頭の中の疑問に応えるかのように目の前の彼女が口を開いた。

「倒れたんです、今日」
「倒れた!?」
「今は落ち着いて眠ってるんですけど」
「そ、そうなんですか…ということは看病してくださったんですね。ありがとうございます」

騒つく頭の中を落ち着けるように、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
森さんに焦りのような感情は見受けられない。美己の様子が今は落ち着いているというのは、本当なのだろう。

「あの、少しだけお時間よろしいですか」
「え?えぇはい。構いませんが…」

少しの間の後、ゆっくりと切り出した彼女。少しだけ、重い空気を纏って。
そんな森さんの目の前に、俺はゆっくりと腰を下ろした。
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