仕事も恋も効率的に?

★すれ違いからの勘違い★

翌週、相変わらず朝からパタパタと動く各課のお姉ちゃん達。
みちは、今週当番ではないらしく少し遅めに出勤してる。

兎に角、自分で驚くほど目がいく。先日までの甘い時間が流れて欲しいのに、みちはどんどんつれなくなる。もっと俺のそばにいて欲しくて構ってしまうが、押しすぎてもよくないのか?なんて考えも出てくる。

駆け引き上手だったらいいが、残念ながら大した恋愛経験もないし、ここまで惚れるとそれどころでもなくなる。もっと違う顔も見たい、一緒にいたい、そればかりが頭を占める。

ぼーっとしながら、仕事をしていると、珍しくみちがそばに来る。

『佐川さん、ちょっとよろしいですか?』
『はいよ、どした?』

ウキウキしてしまい、すぐさまみちの方に体を向けてしまう。しゃがみこんだみちの手元にあるのは、俺が頼んだデータ。

『...これ、多分ダブリで...、これは地点が違うような...』
『ん?どこ?』
『ん、さっきWebで見たんですけどどうにも違うような...』
『あー、これ生データだからな』
『それに、非公開のは見れないから判断できなくて...』
『だったらこのIDでこっちみろよ。ほら、おいで』

みちのデスクに移動し、隣で操作する。
相も変わらず俺を見ないみち。そのくせ、他のメンバーとは楽しそうに話す。
もしかして、グイグイ行き過ぎて引かれたとか...?

でも、取られるよりマシ...、俺みたいな中年入りかけより、若いヤツの方が好きだと言われたらたまんねぇし...。中身で勝負するしかないから。好きだよって言葉すらまだ出せないけど、俺が気があることは感じて欲しい。

『...やっぱこれちょっと変ですね。見ておきますね』
『あ、あぁ、頼む』

周りも、俺がみちのそばにいるせいか、誰も邪魔をしない。でも、みちは真っ直ぐにパソコンを見つめる。
長い睫毛は横から見ると益々長く、綺麗な肌に薄めの唇。本当に見惚れる...。

『...さん、佐川さん!電話です!』
『あっ、はいっ!』

後ろから狭山さんに言われ、しぶしぶデスクに戻り、みちはそのまま作業をする。

『佐川さん、これなんだけど』
『はい?』

狭山さんが声をかけてくる。
俺とみち、田丸さんと狭山さんは同じ業務が絡んでいるので、それについてはちょくちょく話す。

『んー、そうですね、いいと思いますよ?』
『ですよね!これもあるんですけど』

楽しそうに盛り上がる声が聞こえる。
ちらっと見てみると、相変わらずデスクの片側に腕をつき、狭山さんのそばでニコニコ笑うコウさん。気がつくといつも話していて、コウさんは狭山さん狙いなんだと確信する。嫌な相手のそばには行かないから。

もう気にしない。何されても何言われても、それがサービスというか、コウさんのコミュの取り方なんだと言い聞かせる。

本当は、抱きしめられることも、抱き上げられたことも、壁ドンれたことも、思い出す度にドキドキしてる。でも、それは勘違いというか、コウさんの普通で、勝手に盛り上がる頭の中に冷水をかける。

あんなイケメンに口説かれたら、誰でも落ちちゃうわ、なんて思いながら。
上手くいくといいですね、くらい声かけたいけど、そんな気持ちにはなれない。

仕事あるし、狭山さんとも絡みがあるのでそんなこと言えない。
心の声は、羨ましい、だけど。
ずっと潜めて。
< 20 / 40 >

この作品をシェア

pagetop