仕事も恋も効率的に?

★繋がった気持ち★

駐車場まで抱き上げられたまま移動し、もうよくわからないが甘えてしまおうと、大人しくする。

ピピッとハザードがたかれ、真っ白なステーションワゴンタイプのBMWの前で止まる。助手席側のドアを開けて、乗せられる。

『よっ...と。いま暖めるから待ってて』
『...すみません...』
『あやまんなっつの!』

急ぎめで運転席に周り、エンジンをかける。
革張りのシートは少し冷たく、ひんやりして気持ちがいい。
気持ちが良くてそのまま目を閉じてしまう。

大人しく眠ってしまったみちを隣にのせ、マンションに戻る。
予定よりも急な展開にはなったが、やっと手に入ったことが嬉しく、テンションが上がってしまう。

信号待ちで、深めの眠りにつくみちの寝顔をみながら、頭を撫でる。
ここんとこ、県の照会に国の報告にと、ワタワタしていて、さらに俺のまでやってるから疲れたんだろうと微笑みながら見つめる。
来週からは議会の質問が上がる時期で、課内全体がバタつく時期だ。
週末はゆっくり2人で過ごそう、なんて考えるだけでニヤニヤしてしまう。

さほど遠くないマンションには30分ほどで着く。一応市内ではそこそこのマンションらしいが、異動しても通勤しやすく買い物もしやすいので住んでいる。

『みち?』
『...ん...』
『みち?ついたよ?』
『...んっ、あ、すみません...、私、寝ちゃって...』
『大丈夫だよ。ほら、掴まって』
『...ん』

寝起きだからなのか、素直に首に手をまわすのが可愛い。

『っと...。ちょっと寒いからな』
『ん、だいじょぶ...、暖かい...』

ぎゅっと抱きつかれ、あー、色々まずい...俺がヤバい...なんて思う。
オートロックを開け、部屋に入る。

『ただいまー』
『...お邪魔します...』

小綺麗な部屋の中にある、黒のソファに座らせてもらう。コウさんの香りが広がるこの部屋はなんだかくすぐったくも恥ずかしい。

『っんー!』
目いっぱい伸びをし、おでこに貼っていたシートをはがす。

『なんか食えるか?』
『ん?うん、でも大丈夫ですよ。眠ったら楽になりました』
『...寝不足とか知恵熱か?笑』
『...また、子供扱いして~...』
『くくっ...治ったなら俺にとっては益々好都合だけど?』

笑いながら隣に座り、熱を確かめる。

『少しは下がったか』
『うん。寝不足だったのかも。夕方調子悪くなりやすいから...。ごめんなさい』
『調子悪い時は無理しないこと、わかった?』
『...はぁい...』
『よし、いーこ。風呂入れてるから、入ってきてもいーぞ?』
『...え?』
『なに?お前、この期に及んで、帰れるとか思ってないよな?』
『...!!』
『ずっとそばにいろって言ったろーが。今日からお前は俺と一緒』
『え、な、...は?!!』
『調子悪くなかったら、とりあえず明日着替えとか取りに戻って、必要な買い物いこう』
『な、ちょっと急ですって!さっき、その、あの...』

ギシッとソファが沈み、上に乗るコウさん。今日何度目かの上にいるイケメンはちょっと不服そうな顔をする。

『そんな待ってあげるほど余裕ないの。最初から言ってるだろ?ずっとそばにいろって。聞いてなかったのか?』
『いや、聞いてましたけどもっ...』
『んじゃ返事したんだから諦めるんだな。もう二度と離してやるつもりないし』
『うぅー、あまりにも展開が...』
『...一緒に住むの、いや?』
『違います!いやとかじゃなくて!!』
『ふーん?笑。いやじゃなくてよかった』

ほっとしながらも、微笑んでしまう。随分と待たされて焦らされた期間が長かったような気がして、一気に自分のモノにしたいという考えしか出てこない。

『もう...、じゃあ、飽きたからいらないとか言わないでくださいね?』

ちょっと拗ねた顔でそんなこと言うから、益々可愛くなってしまう。

『バカだね、そんなこと言うわけないでしょ?ずっと離してやんねーよ』

ぎゅうっと抱きしめながら体温と鼓動が伝わる。

突然、聞きなれたガス会社のお風呂が湧いたメロディが流れる。

『...お風呂湧いた...』
『クスクス...そうみたいですね 笑』
『大丈夫なら先入ってこいよ』
『ん、佐川さん先どーぞ?私、ちょっとキッチン借りたいです』
『ん?それは構わないが』
『お腹すいたでしょ?お陰様で体が楽になったのでご飯作りますよ』
『っ、マジで...?』
『えぇ、適当に使ってもいいですか?』
『全然。むしろお願いします』
『クスクス...わかりました 笑』

ほら、どいて下さいと笑って言われ、大人しく言うことを聞く。

『お前、ほんとに大丈夫?無理してない?』
『全然平気です。なんか、すごく身体楽になりました』
『どれ...』

コツと、おでこをあてるが、確かに先ほどよりははるかに下がっている。

『...やっぱ知恵熱?笑』
『むぅ...、佐川さんの事で知恵熱出したのかもねー!なんて...』
『!』

立ち上がったみちをまた抱き寄せ、俺の上に座らせる。そのままキスしながら、体の線をなぞる。

『っ、ちょ...ん...』
『...俺の方がおかしくなりそうだったっつの...』
『...好きですよ?知ってたんでしょー...?』
『...全然?俺のアプローチ全部無視しやがって...。困ったやつだよ 笑』
『そんなのなかったですもん。もう、ほら、お風呂!』
『ん 笑。ほんとに体大丈夫なんだな?だるくないか?』
『だーいじょーぶ』
『わかった、んじゃ先入ってくるな』
『はぁーい』

ぽんと頭を撫でられ、ふろ場に向かうのを見送ると。

『...一緒に入る?』
『なっ!入りません!さっさと入って!!』
『クックックッ...わかったよ 笑』

何言ってるの、もう...!赤くなるのを感じながら、キッチンに向かう。
小綺麗すぎるキッチン。一通りキッチンツールは整ってるが、使った形跡が無さすぎる...。冷蔵庫もお酒はたくさん入ってるが、食材があまりない。

『ふーむ。おつまみくらいしか作れないな。明日買い物行かないと』

独り言を言いながら、ちょっと恥ずかしくなる。ほんとに知恵熱だったようで、いつもと変わらない体の調子に、自分でがっかりする。この歳でマジなに...。好きな人と結ばれて治るって、どんな病よ...、なんて呆れながらも、幸せな気持ちになっている自分に素直になる。
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