仕事も恋も効率的に?
『とりあえず...バスタオルとかも揃えるか』
『そうですね。アフタヌーンティーかFrancfrancでも入ります?それともZARAとかにします?』
『みちの好みのとこでいいよ?』
『えぇ...?私の好みって...』
『みちが選んだものがいいってこと』
『もう...、じゃあZARAにしましょうか。コウさんのお部屋モノトーンだし』
『ん、わかった』

そこらここらにカップルの姿。基本的に買い物は1人だったし、ウロウロするのがあまり得意でもないので目的のものを買ったら帰っていたが、みちと一緒だと楽しくなる。若い頃みたいなはしゃぎ感はないが、落ち着いてゆっくりするのが心地いい。

『これと...、あと、ベッドもですよね。アパートから持ち出すの面倒だし...新調しよっかなぁ...』
『なんで??』
『なんでって?コウさんのお隣の部屋広いし、あそこに置こうかと思って。お布団苦手なの』
『うん?俺のベット、輸入盤ダブルサイズだから2人くらい平気だよ?つか、昨日一緒に寝て平気だったでしょ?』
『なっ、ちょ...』
『一緒に寝るのにベットいらないだろ。ピロケースとカバー買おう』
『えっ...』

毎日一緒に寝る気ですか?!!
心の叫びを、この人混みで披露する訳にも行かず、むーんと大人しく言うことを聞く。

ベッドルームに合わせた色合いのものを何色か選び、食器棚になかったものを選ぶ。

『コウさん』
『んー?』
『あの...』
『どした?』

ふと見ると、ペアマグを真剣に悩むイケメンが、カップを持ったまま見つめてくる。

『あ、れ...?』
『ん?いや、マグ買おうと思って。どれがいいと思う?やっぱ女の子的にはハートとか??』
『え...。コウさん、私いくつだと思ってんですか...』
『え?36?』
『もう折り返してる私がハートのペアマグとか似合わなすぎですって...。ほら、こっちは?』
『そぉか?俺はハートでもいいけど...』

ソーサー付きのマグは、ソーサーがハートの形に抜かれていて、ミルクや砂糖、簡単なお菓子が置ける楕円形のハートになっている。白に黒で花のラインアートがなされていて綺麗だ。ペアは色が逆転している。

『お、いい、これ』
『ね?これにしましょ。あとはカトラリーも足りないかな』
『んー。そいや、さっき言いかけたの何だ?』
『ん?あ、ペアマグを買いませんか?って言おうと思ったんです 笑』
『なんだそっか 笑。同じか 笑』

ニコニコして腰に手を回しながらカートを押してくれる。
一通りシンプルだがオシャレな食器を選び、会計に行く。

『ちょっと買いすぎましたね...。荷物置かないとだめかな...』
『あ、大丈夫。クロークサービス使おう』

すちゃっ、と有名なプラチナカードを出し、クロークしてここに運んでください、と言うコウさん。
イケメンの接客をするお姉さんは、顔を赤らめて処理をしている。ちょっと不機嫌になるも、とりあえず店から出る。

『...後で精算して下さいね』
『なにを?』
『さっきの』
『ん?...?俺が出してなんか変?』
『いや、そーゆーんじゃなくて...』
『一緒に済むし、ずっと一緒なんだからいーの。ほら次はどこいきたい?』

何もかにもがハイスペック過ぎて、ちょっと目眩がする。

『ん~~...』
『あ、お前寒がりだからヒーター買おう』

電化製品売り場につき、ダイソンのヒーターと足元用のヒーター、空気清浄機と加湿器の一体式のを追加。新婚生活でも始めるかの如く大量。

『あ、ルンバ』
『ある』
『え?』
『うちにある。ダイソンもある。だから大丈夫 笑』
『コウさん、一人暮らしなのに、揃えすぎ...クスクス 笑』
『...二人暮しになるからいーの 笑』
『も...』

仲良く手をつなぎながら、荷物も全て預けたのでのんびり見て回る。

『...あ、ちょっとみていーですか?』
『もちろん。あ、俺ちょっと本屋寄ってくる。すぐ行く』
『わかりました』

ティファニーや4℃、スタージュエリー等お手頃なジュエリー達をみて目の保養。ピアス買っちゃおうかな...。

少しでも、ほんの少しでも隣にいて変じゃないように、アクセサリーも気をつけないとなんて思う。というだけでなく、単純に好きなのでつい買ってしまう。
これ、コウさん好きそうかな~。

『すみません、このピアス出していただけますか?』
かしこまりました、とニコニコしながら店員が出してくれる。お似合いです!と言われるとお世辞でも嬉しくなる。

ダイヤとスワロフスキーがついたロングピアスと、ダイヤのジルコニア。片耳しか開けていないので、MIXされたピアスを選ぶ。

『おまたせ』
『?!!お、おかえりなさい』
『お?可愛ーじゃん』
『ほんと?!これください』

コウさん好みが分かって、即決する私...。我ながら単純...。

『はえーな 笑。あ、あと、こいつのリングサイズ見て貰えますか?』

かしこまりましたと、またも目をキラキラさせる店員にちょっとムカつく自分が嫌...。
つーか、そもそも何?と思いながら店員に手を差し出す。

『9号ね。すみません、このペアリング、9号と15号で下さい』
『ありがとうございます!彼女様によくお似合いだと思います』
『どーも』

女性用は細く、螺旋型のシルバーに邪魔にならないが存在感のあるダイヤ。同じデザインながら、ダイヤが控えめな男性用。
ピアスと一緒にペイされ、ちょっと焦る。

『コウさん!さっきのは払う!』
『やだね~。俺からのプレゼント』
『ダメですってば!そんな甘やかさないでよ!』
『いーの。俺がそうしたいの。俺からのプレゼント...いらない?』

プラプラとティファニーの袋を目の前に差し出される。

『う...欲しいです...』
『ほんとにぃ?』

明らかに意地悪な顔で、俯く私をのぞき込む。

『コウさんからのプレゼントなら、欲しいに決まってます!もう!』
『素直で可愛い...』

そのまま軽くキスをされ、また手を繋いで歩いてしまう。
こんなところで平然とされるとも思っておらず、体全体が熱くなる。

『んも...』
『んー、手だけじゃ足りない?』

ぐいと腰を寄せ、抱き寄せて歩く。
若いカップルならわかるが、いい年齢になって、これはちょっと恥ずかしい...。でも、みちが俺のってのがよくわかるだろうし...。そもそも、チラチラ男が目線を飛ばしてるのが腹が立つ。美人に目がいくのは性なのかもしれないが、あんまり面白くはない。

『どーれ、あとは何かあるか?』
『ん、あとは食材ですかね』
『おっけー』
『あ!』
『?なんだ?』
『ちょっとあそこみたい』
『ん?』

え、ランジェリー売り場?!
みち...俺の精神試してるのか...?苦笑。

『...本屋さんにいてもいいですよ?』
『...んー、一緒にいく...』
『クスクス...笑』

気になっていた新作を見て、即決してキャッシャーに行く。ちょっと気になって後ろを付いていく。

まぁ、今日は彼氏様とご一緒なんですね!なんて言われている。うーん、なんだろう、この優越感。思わず後ろから抱きしめてしまう。

『ちょ、コウさん...』
『んー?』

美男美女でお似合いですわ、とニコニコ言うのはいつも担当してくれている店員さん。恥ずかしいがちょっと嬉しくなり、もうひとつの新作も追加してしまう。

サイズはFでよろしいですよね?と聞く店員に、頷くみち。
.....F?!あぁぁ、だから、こんなに柔らかいのか...なんて、今朝まで楽しんでいた感触を思い出す。
ご満悦のみちだが、サイズを聞いてしまうとつい目がいく。

『...どこ見てんですか...』
『あ、いや、その...』
『...コウさんのエッチ』
『んな!お前ね!仕方ないだろが!』

ちょっと赤くなるコウさんをからかいながら、クロークまで来る。

佐川様、お待ちしておりました。と運ばれるワゴン。

『.......』
『.....コウさん、これ無理だよ。車に入らないよ...』
『...あ、あぁ...。配送にしてください。今日の夜間で』
『かしこまりました』

『お夕飯お外やめて、買い物して帰りましょ?お荷物届くんだし』
『んー、そだな。んじゃ明日外で食おう』
『うん』

食材のコーナーでもしこたま買い物をし、それだけでもトランクがパンパンになる量だ。

『コウさん、パン買い忘れた』
『あ、そうだな。よっていこう』

スイーツで有名な店は、低糖質のスイーツやパン等も豊富で、二人とも常連。

『ピザも買う?』
『ん、そーしよう。あとケーキ食いたい』
『チョコでいい?笑』
『うん!』

洋菓子が好きなコウさんだが、ここの店のしか食べられないので、目がキラキラしてる。可愛いと思いながら選んでいると。

『あれあれあれぇぇぇ?佐川くんと本田さん
?』
『??』
『楠さん!』

北川さんと同じく維持のメンバーで、一緒になってからかっていた1人。

『こんばんは』
『あれぇ?!もしかして、もしかする??』

ニコニコしながら聞かれ、頷くコウさん。

『おめでとぉぉぉ!』
『ありがとうございます 笑』

どんだけ知れ渡ってるの...ねぇ...。コウさん...貴方ザルなの...?

楠さんの彼女らしき人は、ぺこりとお辞儀をしながら、イケメンと美人さん、カップル?すごいお似合いじゃん!モデルみたい!ときゃっきゃしている。

『邪魔して悪いねー』
『いえいえ、こちらこそ?』
『いやー、本田さん、よかったの?佐川くんで 笑』
『ちょ、楠さん、やめてくださいよ。やっと口説き落としたんですから!』

こくんと頷くみちをみて安心しながら腰をだく。

『というわけで、一緒に住むので。後で住所変更させます』
『ちょー!佐川さん!!』
『ひゅー!意外と手が速いねぇ、佐川くん 笑。週明け楽しみにしとくよ 笑』

ヒラヒラと手を振って去る楠さんを見ながら、呆然とする。

『...展開が急なんだってば...』
『ん、早い者勝ちってゆーだろ?ほら、帰るぞ』

ルンルンとしたご機嫌のコウさんに抱かれたまま、駐車場へ向かう。
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