仕事も恋も効率的に?

★研修★

ボーッとしながら回覧に目を通す。

『お...研修か...』
着任一年目が受ける研修通知。見ると、俺とみち、新人と新任の上役。
まぁ、主催はうちの課だから事務系は配置されるだろうが。
ふーん。とハンコを押しながらちょっと浮かれる。

案の定、一緒に行きましょう~と、少し不安げな顔をして俺のところに来るみち。
勿論、と答えながらにやける俺。

なんでこんな単純なことで...。照れる理由が分かってるのに、気付かないふり。
なんせ、俺も40歳。みちも36歳であの容姿だ。若い子なら口説けそうだが、ここら辺になると慎重になる。
言い聞かせる、何でもない、ただの同僚だ、と。
こんなに目で追ってるのに...心と理性の葛藤。


研修当日。
『...そろそろ行く?』
『あ、はい!』

ニコッとされると弱いの、知ってる...?
知ってか知らずか、隣を歩きながら別棟の研修場所へ向かう。
キイ...とドアを開けると...

『...』
『誰もいない...』

研修担当の委託先が案内してくれたが、受講者がいない...。

『こりゃー、前の会議伸びてますね 苦笑』
『だな 笑』

2人1組でお願いしますと言われ、当然のごとくペアを組む。

『なんか難しいやつになったらお願いします。頼りにしてます』
『くくくっ、なんだよそれ 笑』
『佐川さん、かしこっぽいから、お任せします!』
『一緒にやりゃいーだろーが 笑』

なんだかくすぐったい。隣にいて、触れる距離。実務講座もある今日は多分2人で同じものを使う。
ちょっかい出したくなる気持ちを抑えていると、ザワザワと会場に人が入り出す。

『終わったみたいですね』

長引いた会議は、予定の休憩を早めて開始する様だ。
1時間半の座学を終えて、実技に入る。

『...ふむ。』
『どーした』
『佐川さん、やって』
『...くくくっ、わかったよ 笑』

実際あまり関係ないのだが、触ったこともありませんではお話にならないので、交換で行う。

では、みなさん計算してください、の声でみなカリカリと音がする。

『...佐川さん、こーなった??』
ヒソヒソと顔を近づけて聞いてくるこいつは、俺にキスしてほしいの?と勘違いする。
『んんっ、あぁ、なったよ』
照れ隠しをするがたぶん赤い。
『よかった!』
ホッとした顔に、微笑ましくなる。

『こっちは?』
『ん?』

だいぶ近づいた顔に、お互いが気付いて恥ずかしいのに笑ってしまう。
そんなところをカシッと音がして、見てみると、写真に収められている、なう。

各テーブルを回って撮っているようで、ログだなと納得しながら、次々出される問いに対応する。

『ここまで終わったペアいますか?』
すっと手を挙げたものの、俺らだけ?!
『じゃあ、数値を』

ふいっと見ると、お願いします、みたいな顔で見つめられ、可愛いなぁって素で思う。
佐川さん?とみちから声をかけられ、慌てて2人の数値を述べて他を待つ。

長い?講義が終わり、事務方はバタバタと片付けをしていた。
みちも手伝いながら、台車にのせた機器類を運んでいた。

『あれ、みっちゃん』
『あら、笠井さん!』

超がつくほどのお偉いさん相手に、ニコニコ接する。

『よろしくたのむよ?』
と残された長がつく役職は、青ざめながらも、何者?みたいな顔を向ける。

『今の誰?』
『ん、お友達?』

どんなにおっさんでも、偉いさんでも...なんだか気に入らない。ムカッとして、みちが持つ荷物をとる。
『はやくこい』
『っ、まって下さいよ~!』
慌てて、近場の運ぶものを手に取り、後ろをついてくる。

お前は俺だけ見て、俺のそばにいたらいいんだよ。

言いかけた自分を抑えた。
それはそれは必死に。

好きだ
まだ隠してられる。でも好きだよ。

そんな気持ちを押し殺して戻る。
まずいな...。そう、落ち着かせる方法を模索し、独り言を言いながら。

数日後、研修の報告会欄を見ると、俺とみちのツーショット。顔を近づけ、すごく中が良さそうな、アレ。

思わず、こっそり。
『このデータ後で下さい』
庶務に頼んで送ってもらう俺がいた。
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