イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
Stage.1

同期のアイツと残業


「ご来店いただきまして、ありがとうございました」

最後のお客様がロビーから出て行った午後三時。私の勤め先である、よつば銀行横浜支店のシャッターが閉まる。

営業時間内の接客は終わったものの、ホッとひと息ついている暇はない。銀行はここからが一日で最も忙しい時間を迎えるのだ。

現金と入出金伝票の照合、納付された税金と公共料金の取りまとめなど、今日中に終わらせないとならないことが山ほどある。

ああ、忙しいとバタバタと業務に取りかかること三時間。あっという間に定時である午後六時を迎えた。残っている業務は書類のファイリング作業のみ。

両手を掲げて凝り固まった肩と背中を伸ばすと、あと少しがんばろうと自分を励ます。そしてファイリングをするために席を立ち書庫に向かった。そのとき……。

「柴田(しばた)さん」

「はい」

名前を呼ばれ、足を止める。

私に声をかけてきたのは、同じ預金課窓口係の鈴木さん。入社十年目のベテランの彼女は美人で人あたりがいいため、上司やお客様からの評判がいい。

「悪いけど、これ、お願いしてもいい?」

「あ、はい。わかりました」

鈴木さんが差し出してきたのは、ファイリングする書類の束。その量は厚さ五センチほどある。

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