妻が眠っている。もう二ヶ月の間、妻は一度も目を覚さないままベッドに横たわっている。僕はその寝顔の横にいる。毎日その頬を撫で、毎日その唇に口づけをする。

 十月のあの日、悲鳴に駆けつけた僕の前に、真っ赤なスカートを抱きしめて「ダメ、こんなことダメ」と叫ぶ妻がいた。妻の意味することを理解するのに少しの時間が必要だった。
 
 救急車の中、妻は狂ったように泣きさけび、抱きしめようとする僕の腕をはねのけた。
 
 
僕の、僕たちの子どもはいなくなってしまった。僕は僕と杏子ちゃんの子どもを殺してしまった。

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