週末、日曜日――。


「荷物も案外少なかったな……」


案内された新たな生活の拠点となるマンションの自室で、沙帆は持ち込んだ荷物を目に独り言を呟いていた。

怜士も仕事が休みだという今日、いよいよ用意されたあの新居へとやってきている。

朝から怜士が沙帆の自宅まで車で迎えに訪れ、改めて沙帆の両親へ挨拶をしていた。

いよいよ結婚を前に娘が家を出ていくというのに、両親共にそれは見事に晴れやかな表情だった。

父親の良嗣くらいはさすがにしんみりするだろうと思っていたのに、涙腺が緩むどころか「しっかりやりなさい」と冷静な言葉をかけられた。

一方の沙帆は、実は偽りの婚約だという内情に、長くいた自宅を出るというのに全く悲しい気持ちにはなれなかった。

どうせまた帰ってくる。
それがわかっているから寂しくもなんともない。

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