【青・超短編・画】綾波に捧ぐオマージュ(スト漫のシナリオ)
薬漬けのモルモット
病室でベットに寝転ぶのは何年になるだろう?
私はあや。まともに学生生活をおくって居たら中学生だ。私はまだ私自身を愛する事を知らない自己犠牲派の若造。
今、感染している伝染病の新薬開発の為にモルモット化して居る。臨床試験を必要とするあらゆる難病.白痴.脳の知的障害.日々体重が増加する極度の摂食障害.浸潤癌ステージ4.統合失調症(破瓜型)1級.強迫性神経症.サイレントキラーを伴う歯周病.そして屈辱的な事に脱孔と脱腸と透析を必要とする腎不全。
辛い怖い病だけれど、私が犠牲になれば、誰かが助かるんだ。そしてソノ誰かは大勢の命。だから私は耐える。免疫がどんどん無くなってゆく薬の多量に膨れ上がってゆく投与は、本当は怖い。だけども自分自身で決めた事だから、私はやり遂げたい。そんな私。
最近夢をみる。
室内の空気がきらきらしている。
さも雪が空気上で溶けて行くかの様。
そんな中、綺麗な顔をした同世代の男の子が、まだ君は、はやいから此方にこなくていいんだよと。
色素の抜けた男の子は、私を鏡で写してるかの様。ガンガン投薬してる副作用に異性に近づくモノがあるのかもねと言われて驚く。私は特に私の性別にこだわりをもっていないと想ってた。だから男子化してもかまわい。恋なんてしたこともないから。だけど、何か解らない苦しさが生まれた。私は母には成らないけれど、からだの仕組みが変わってゆく事に少しの悲しみを覚えた。可笑しい。でも、自己犠牲は悲しみをあらわにした。私、女の子で居たかったんだ。不思議だ気がつくと、はらはらと涙がこぼれる。
いつ死ぬかも解らないこの命が哭いている。その時、きらきらした空気をまとった彼の声が聞こえた。「もう此方にくる?」彼の名前はきっと死神だ。絶対そうだと想った。病室内。ひらり溶けてゆく風花に魅いられる私。

「あや、さよなら」専属医が私に声をかける。「さよなら」医師(センセイ)

私の体は動くのを徐々に止め、彼の居る世界へと足を踏み出した。
「死にたくない」まだ。

モルモットあや死亡。



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