ハイド・アンド・シーク
見てるだけでいい


誰かと話す時はいつも穏やかに微笑んで、物腰の柔らかな口調で心地いい低い声で話してくれる。
時々困ったような顔をしたり、驚いたような顔をしたり、苦笑いしたり。でも、怒ったのは見たことない。
いつだって相手の立場に立って物事を考えてくれて、寄り添ってくれる。

背筋は基本的にピンと伸びていて姿勢が良くて、すごく丁寧なお辞儀をすることも知ってる。

背は高いけれど、態度が控えめだから威圧感はまったくない。
細身でスタイルがいいのは、どこかジムとか通っているのだろうか。

パソコンのキーボードをうつ手が、男らしいことに気づいてるのは私だけかな。
その手に触れたいって何度思っただろう。

少しくせっ毛ぽい髪の毛を自然にきちんとセットしている黒髪は、社会人にとって大切な清潔感を際立たせている。

彼は特別イケメンじゃない。
でも、それでもみんなきっと彼のことは好きか嫌いかで言えば好きだと答えるに違いない。

性格って顔に出るから。
みんなそれに気がついてる。


私だけの彼になってほしいなんて思わない。

見てるだけでいい。
遠くから、目が合わないように見てるだけでいい。

私にはもったいない、とても素敵な人だから。

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