僕に君の愛のカケラをください
チャンス
昼の休憩が終わって帰社した葉月は明らかに顔色が悪かった。

パソコン画面を見ながら作業をしては、時折、一点を見つめて何度もため息をつく。

"命に関わるんです"

昨日、フレックスタイムに変更したいと言った葉月の瞳は色っぽくも真剣だった。

身内?彼氏?友達?

いずれにしろ、葉月にそこまで心配してもらえる相手が羨ましい。

蒼真は4月に入社してきた葉月が気になって仕方なかった。

しかし、たった2ヶ月の付き合いの上司では距離の縮めようがなかった。

初めは

"ずいぶん可愛らしい子が入ってきたな"

と、いうありがちな印象だった。

その印象は次第に変化していく。

葉月の仕事ぶりは男にも引けを取らなかった。派遣で三社まわり、鍛えられただけのことはある。

にもかかわらず、派遣の立場が身に付いているからか絶対にでしゃばることはせず、言葉と態度には思いやりがある。

"誰にでも優しい葉月の視線を独占したい"

それは、硬派なはずの蒼真の中に目覚めた微かな恋心の種であった。
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