この日は朝から全校集会があった。夏奈が起きたころ、アキラはもう部屋にいなかった。広い体育館で夏奈が辺りを見渡していると、見慣れたロングのポニーテールの少女が壇上に現れた。

「ア、アキラちゃん……!?」

驚く夏奈に、隣にいた同じクラスの少女は笑った。

「アキラちゃん、この学校の生徒会長だから、集会の時はよく壇上に立ってるよ!」「そ、そういえば生徒会長だったね……! アキラちゃんすごいなぁ……」

アキラはフレンドリーな性格で、年齢に関係なくタメ口で接して欲しいとのことだった。そのため、夏奈達のような年下でも、アキラに対して友達口調なのだ。

夏奈が壇上を見上げていると、周りの生徒達がざわついた。

「あれ、高2の篠原さんだよね?」
「やっぱり今日も美人だなー」
「あれこそ女神様だよなー」

男女関係なく、口々にアキラを褒め称える声。

「アキラちゃんってこんなに大人気なんだー」
「うん、アキラちゃんは容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、それでもって絶対自慢しないところが人気なんだよねー。本人は気付いてないみたいなんだけど、密かにファンクラブもあるみたい」
「ひゃあ! そこまで人気なんだねー」

夏奈はアキラを憧れの眼差しで見つめた。つくづく、ルームメイトがアキラでよかったと、心から思った。

間もなくアキラがマイクに電源を入れ、話し始めた。

「……えー、今日はみなさんにお知らせがありまして…………という訳で、ここ最近学校近くの草がボーボーなんですよ。まあ本当は夏ぐらいから、そろそろ草引きしないとなーって園長と話してたんですけど、夏に草引きって暑いじゃないですか。私昔夏に草引きさせられて、熱中症になりかけたから、夏にはしたくなくて。だから、暑すぎず寒すぎず、この時期こそ、草引きに適していると思うんですよね! てことで、明日は授業サボって草引きです!」
「イエェーーーーーーイ!!」

生徒達の歓声が体育館中に響き渡った。

「アキラちゃん、ぶっとんだ演説だなぁ……」

夏奈がそう呟くと、近くの男性が懐かしい声で語りかけた。

「アキラちゃんは相変わらずあんなだからね。でも、みんなから慕われてるし、すごいよね」
「あ! 園長先生!」

園長の遠藤は優しい笑みを浮かべていた。

「どう、夏奈ちゃん。少しは慣れた?」「はい! みんなに優しくしてもらって、だいぶ慣れました!」

すると、遠藤はさらに目を細めて笑顔になった。

「それはよかった。また何かあったら言ってね」
「ありがとうございます!」

夏奈の心はとても穏やかであった。クラスの人や遠藤は優しいし、アキラは面倒見がよく頼りになる。しかし、ある疑問が浮かんだ。全てにおいて完璧なアキラが、この学校に通っていること……。何か、彼女に欠けている感情があるのだろうか? もしかしたら、もう治ったのかもしれない、夏奈はそう結論づけた。

そんな中、アキラは明るく大きな声で熱い演説を続けていた。