夏奈の頭に多くの疑問と不安が浮かぶ。

「サクラ学園……? 感情の、欠落……?」

そんな夏奈に、遠藤は優しそうな目で答える。

「感情って、たくさんあるよね? 楽しいとか、悲しいとか……。ここにはそういった感情の一部分がもともと乏しいとか、途中で薄れてしまった子、わからなくなってしまった子達が入学してるんだ」
「……ということは、私も?」
「そういうことになるね」

夏奈の頭に、何かがよぎる。私に足りない感情……?

しかし、黒くて重い物がのしかかり、夏奈の考えが中断された。長時間眠っていたようで、思考がはっきりとしない。そして、何故か、思い出してはいけない気がした。

「ごめんね、急に連れてこられてこんなこと言われても、不安に思ってしまうよね。でも、心配しないで! さっきも言った通り、やってることは普通の学校と変わらないし、必ずここで新しく友達を作って、いい学園生活を送れるから!」

遠藤は微笑む。夏奈はまだ事態をなかなか把握できなかった。何故サクラ学園という学校にいるのか、あんなに眠っていたのか、この学校が本当に普通の学校なのか……。

だが、それはまた遮られた。振り返ってはいけない、もっと……そう、もっと前向きにならなければ……そんな思いが夏奈に込み上げてきた。

「園長先生、ここで私、成長していけるんですよね?」
「うん、きっとできるよ」

夏奈は持ち前の明るさを見せ、満面の笑みを作ってみせた。

「私、正直まだよくわかっていません。でも、どうしてだろう、ここで頑張っていこうって思うんです……!」

子どものように笑う夏奈に、遠藤も穏やかな表情になった。

「ありがとう。夏奈ちゃんはポジティブでいい性格だなぁ。まだ色々と錯乱していると思うけど、ゆっくり落ち着いてね。何かあったら、何でも相談に乗るからね」

そう言って遠藤は部屋の窓を開けた。

「あとでもっと詳しく説明をするよ。大丈夫、すぐに馴染めるようになるから」

本来は不安に襲われるはずなのに、どういう訳か……遠藤の優しさと、柔らかな日差し、そして暖かい風が、夏奈の心を落ち着かせた。