12月に入り、寒さも増してきた。週に1、2回ほど放課後に黒宮と勉強をするようになり、夏奈はとても幸せだった。しかし、彼女には唯一、憂鬱に思うことがあった。


寮の部屋の中で、そのことで1人悩んでいた。ケータイを手に取り、未だに慣れない文を打ち始めた。



『明日、すっごく嫌なことがある(>_<;)でも頑張ろうね!』



もちろん送信相手は黒宮。送信終了後、ケータイを机に置き、また悩み始めた。


ふと、アキラがその様子に気付いた。


「どうしたの?」
「いやー、明日が嫌で嫌で……」
「明日?」


アキラの問いに答えようとすると、夏奈のケータイが鳴った。


「早い! 今日は最高記録だ!」

そう言ってケータイを開いた。いつも以上に頬を緩ませている。


「このところよくメールしてるよね、いいなぁ」
「へへへ……」


夏奈は黒宮とよくメールを送り合うようになった。ほとんどが夏奈からであったが、一度黒宮からも授業のことでメールが来た。その時の夏奈の喜びようは言うまでもないだろう。



『明日って校内球技大会だよね? 僕もスポーツ苦手だから嫌だなぁ。頑張ろう!』



「あー、校内球技大会かー」


アキラがケータイを覗き込みながら呟く。明日は校内球技大会。夏奈はかなりの運動音痴で、昔から体育が苦手だった。


「そう、私運動が大の苦手で……明日が不安なんだ……。私ホントに下手だし、転んじゃうし……」
「大丈夫だって! すぐ終わるよ! 夏奈は確かバトミントンだっけ?」
「そうだよー、サッカーよりかはまだマシかもしれないけど、ダブルスだからもう1人の子に迷惑かけちゃいそう……」
「だから大丈夫だって! 誰も責めないって! ゆるーいお遊戯会だよ!」


明るい声色で夏奈の肩を叩くアキラ。夏奈はもともとおっちょこちょいな性格なため、急に転んだり、空振りしたりしてしまう。体育の授業でもかなりの運動音痴を披露してしまった。


「そうだといいなぁ」
「悩まない悩まない」


夏奈は不安を含みながらメールの返信をした。しかし、アキラの励ましは温かなもので、気持ちも少し楽になる。


明日が憂鬱ではあるが、黒宮やアキラや友人達に囲まれる生活が嬉しく、明日も何か楽しいことがあればと期待もしていた。