溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「もしかして、デートだったりして?」

「えっ……」


きっと、多恵は半分冗談で口にしたんだと思う。
それなのに、私が素直に言葉に詰まったから、図星だということを語ってしまった。


「えー、嘘! まさか当たっちゃった!? 誰と行くのよー!」


途端にキラキラとした笑顔を弾けさせた多恵が、オフィス街のど真ん中で私の肩を掴んできた。
珍しく彼女が興奮しているのは、きっと私が色恋沙汰に無縁だとよく知っているから。


「い、いやっ、あのね、多恵? 別にデートってわけじゃ……」

「でも、男でしょ! 恋愛に慎重すぎる莉緒が男と会うなら、それはもうデート以外のなにものでもないじゃない!」

「えーっと……ほら、多恵! ここじゃ邪魔になっちゃうから……」


たじろぐ私に詰め寄ってくる多恵は、「詳しく聞かせなさい」と笑みを浮かべている。
だけど、その瞳は真剣そのもので、彼女の表情からは逃がさないという気迫すら見えているような気がした。

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