溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜

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「じゃあ、とりあえず乾杯でもする?」

「あぁ。今年もなんとか乗り切れそうだし、ひと足早いけど忘年会ってことで」

「うん、そうだね」


賑やかなフレンチバルで、多恵の言葉に二宮くんと私は同調した。
三人で囲んだテーブルにはグラスが三つとお通ししかないけれど、笑顔で乾杯を交わす。


「今年ももう終わりかぁ。ねぇ、ふたりは年末年始はどうするの? 私は実家に帰るつもりなんだけど」

「俺は、友達と会うくらいかな。実家は片道一時間だから普段からたまに帰ってるし、今回は一日だけ帰るつもり」

「莉緒は?」

「私は帰省しないと思う。今回は、こっちでゆっくりしようかなって」


運ばれてきたばかりのポテトを摘まみ、生のレモンが飾られたレモンサワーのグラスに口をつける。
ふたりは口々に「帰省ラッシュはつらいもんね」とか「実家に帰っても暇だったりするからなぁ」なんて言っているけれど、本当は大切な約束があるから……というのは言わないでいた。

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