溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
朝食の前にお風呂に入ろうと言われ、それはそれは大騒ぎだった。
一緒に入るなんて恥ずかしくて無理! と何度訴えても、穂積課長が頑として「一緒に入るよ」と譲ってくれなかったから。


朝食をどうするかという相談をしていた時には、まだ七時半だったというのに……。その押し問答のせいで、湯船に浸かる頃にはとっくに八時半を回っていた。


もちろん、〝一緒にお風呂〟の攻防に負けた私は、ゆったりとした浴槽の中で後ろから課長に抱きしめられている……という状況になったのは言うまでもない。
三十分にもわたる言葉の応報は、始終私が劣勢だった。


「そんなに拗ねなくてもいいだろ」

「だって、恥ずかしいって言ったのに……」

「莉緒の裸なら、この間と昨日で隅々まで見たよ」

「……っ! か、課長……!」


クスクスと笑う端正な顔は、きっと心底楽しそうにしているに違いない。
反して、私は湯船に数分も浸からないうちから逆上せてしまいそうなくらい、緊張と羞恥でドキドキしていた。

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