「課長が、すごく優しいから……」

「こら」


コツン、と額同士がぶつかる。
ゼロ距離にいる穂積課長は、私の唇を指先で撫でてから少しだけ顔を離した。


「課長じゃないだろ?」

「あっ……」


うっかり“課長”と呼んでしまった私は、思わず自然と笑ってしまっていた。
まだ涙で視界は揺れているけれど、今度はちゃんと笑顔になれた。


「智明さん……大好きです」

「知ってる」


私の言葉に、艶麗な笑みが返ってくる。
自信に溢れた顔つきなのに、真っ直ぐな双眸が幸せだと語っているから、なんだかおかしくなった。


「莉緒。落ち着いたら、話したいことがあるんだ」

「え?」

「今はまだ言えないけど、ちゃんと話せる時まで待っててほしい」


“話したいこと”がどんなことを指しているのかは、今はまだわからない。
だけど、私はすぐに頷いて見せた。


課長は安堵混じりに息を吐いて破顔したあと、再び顔を近づけてきた。
キスの予感に瞼を閉じた刹那、唇がそっと重なって優しくくちづけられた――。