溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「浮かない顔してるわねー」

「え? そう……?」

「うん。寂しくてたまらないって顔してる」


会社の近くにあるカフェを訪れた多恵と私は、運ばれてきたサンドイッチをひとつずつ交換した。
私のフルーツサンドと彼女の卵サンドが、お互いのプレートに仲良く並ぶ。


「そうかな……」

「ごまかさなくてもいいよ。ほづ……彼と会えてないの?」


わざわざ言い直した多恵は、店内をサッと見回した。
たぶん社内の人間はいないとは思うけれど、彼女の気遣いに微笑みを返す。


「ゆっくりデートしたのは、二週間前くらいなんだ。忙しいみたいで、社内でもあんまり顔を合わせることがなくて……」

「うーん……あの人、癒し系のわりには、ガツガツ仕事取ってくるっぽいもんね」

「秘書課情報、相変わらずすごいね」

「ちょっとした噂程度から不倫カップルの逢瀬の場所まで、なんでも入ってくるもの」


多恵は、「知りたくないことも多いけど」とため息をつく。
卵サンドにかじりついた彼女とともに、私もサンドイッチを頬張った。

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