溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「莉緒ちゃん、今夜空いてる? よかったら飲みに行かない?」


突然誘われた私は、人懐っこい表情のまま「刺身の美味しい居酒屋があるんだ」と言われ、コーヒーを待っているわけじゃないのだと察したあとで返答に悩んだ。


今日は多恵は彼氏と約束しているから一緒には行けないし、だからと言ってふたりで飲みに行く気はない。
彼はとてもいい人だけれど、女性社員を敵に回したくないし、誰かに見られたら困る。


「ごめんね、今日はちょっと……」


誘ってもらえたのはありがたいけれど、誤解を生まないためにはきっとこれが正解。
私たちがいくらただの同期や友達であっても、女性の噂話や詮索は怖いから。


「なんだ、残念。多恵から、莉緒ちゃんは空いてるかもって聞いたのにな」

「そうなの? でも、今日は多恵も無理だし、また三人で飲もうよ」

「あー、うん……。そうだね」


どことなく微妙な表情になった二宮くんは、そんなに飲みに行きたかったのだろうか。
だとしたら、彼ならすぐに相手は見つかるだろうけれど、もしかしたら他に理由があるのかもしれないと思い、手を止めた。

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