溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
Epilogue. Side 智明
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「いらっしゃいま――なんだ、お前か」

「なんだとは、なんだ。客を大事にしろ」

「へいへい」


一献の店長であり同級生の元康の投げやりな返事を聞きながら、アルバイトスタッフにビールを注文する。
久しぶりに会った大切な客に向かってあの挨拶はないだろう……と思うものの、高校時代からの悪友の悪態にはもう慣れている。


いつも通り、一献の店内の奥にある小さな部屋で腰を下ろすと、間もなくして元康がビールとお通しを持ってきた。
「今日はペペロンチーノ風枝豆だ」と笑う元康は、新作らしい枝豆を自信ありげに差し出した。


「最近どうよ?」

「やっと仕事の引き継ぎが終わりそうなところだ。来月には、とりあえず営業部長だよ」

「へぇ、昇進おめでとう。じゃあ、この一杯は俺の奢りだ」

「どうも」


元康は、なぜか小上がりに座ると、「それで?」と口元を緩める。
俺は、素知らぬ顔でビールジョッキを手にしたが、元康はニヤニヤしながら「青山さんとはどうなんだよ?」と口にした。

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