溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
思わず飛び起きたけれど、スマホのカレンダーのアイコンには【土曜日】と記されている。
ただ、休みだからと言って、上司からの連絡を無視するわけにはいかない。


今まで休日に連絡が来たことなんてなかったけれど、もしかしたら急用なのかもしれない。
ほんの一分ほどの間にそんなことを考えて電話を掛け直そうとすると、再びスマホが震え出し、ディスプレイには【穂積課長】と表示されていた。


「……も、もしもし?」

『なんだ、寝てたのか』


耳元で響いた声になぜかドキッとして、反射的に「すみません」と口にしていた。
お気に入りの雑貨屋さんで買った壁掛け時計は十時過ぎを指していることに気づき、土曜日はお昼頃まで眠っていることだってあるのに、今日はなんとなく寝坊したような気持ちになってしまった。


挨拶もなくいきなり寝起きを指摘されて、なんだか穂積課長らしくないな、と一瞬疑問を持ったけれど……。寝起き特有の掠れた声を聞かれてしまった恥ずかしさの方が勝って、その疑問はすぐに頭の中から消えていた。

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