旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「知らなかったとはいえ、病気を再発させるような真似をさせて悪かった」

 そっか。さっき叔父さんから聞いたのね。

 だからって、そんな自分を責めるような顔をしないでほしい。

「謝らないでください。私の責任です」

「……明日からはイベントに参加しなくていい。通常の業務にあたってくれ」

「それは、ご迷惑がかかるからですか?」

「そうじゃない。言わなくても分かるだろう」

「でしたら、最後までやらせてください」

 パニック障害は治っているし、再発率も低い病気だ。今日はゆみかとの接触があったから強いストレスを受けたけれど、明日以降は問題なくやれるはず。

 途中で仕事を投げ出すなんて絶対に嫌。無責任な人間は会社には必要ないもの。

「お願いします」

 頭を深く下げると、成暁さんは深い息を吐く。

「分かった。ただし、なにか異変があればすぐに俺を頼ること。いいな?」

「はい」

 よかった。聞き入れてもらえて。

 胸をなでおろして微笑むと、突然抱きしめられた。

「あっあの!」

 叔父さんたちに見られちゃうよ!

「もう少しこのままでいさせて」

 耳元でそんなお願いされたら受け入れるしかない。

 結局、この日は気持ちを伝えることができなかった。
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