仕事終わり、メンバーもまだ帰っていない楽屋の中で俺は1人スマホを弄る手が止まっていた。

俺の親指は送信ボタンの上に。

れんちゃんに初めてのメールを送ろうとしているのだ。

内容のうっすいそのメールがれんちゃんにとって迷惑じゃないかとか、こんな急に距離をつめて拒絶されないかとか。

色んなことを考えすぎて送ることを躊躇していた。


「なにそれ」


耳元でそんな声が聞こえて、一気に現実に意識が戻る。

声をかけたのは携帯画面を覗く悠だった。


「ちょ、勝手に見んなよ!」


俺はスマホの画面をそっと胸に当て隠した。

こっちを見ながら妙にニヤニヤする悠に、メールを読まれてしまったことは容易に察することができた。


「お前女々しいなぁ〜。お前がそんなに根性ないとは思わなかったわ。」

「うっせー。」

「誰なんだよ、それ。いつから?」


秘密を知ったからと言ってズケズケと人の恋愛に首を突っ込んでくる悠に少し嫌悪感を覚えながらも、今までのれんちゃんとの話を最初から最後まで聞かせてやった。

悠は終始ニヤニヤしながら聞いていて、その顔にもまたイラッとくる。


「お前それ完全にストーカーだろ。」


そんな衝撃的な言葉を、満面の笑みで俺に告げる。


「は!?ちげーよ!」

「いや、向こうは絶対ひいてるって。」


その言葉にショックを受けすぎた俺は、もはや何も言い返せなくてただ口を開けることしか出来なかった。


「…お前その状況でいつかご飯行かない?とか聞こうとしてんの?思考回路どうなってんだよ。」


悠の言う通り、スマホの画面にはれんちゃんを誘うための口説き文句がちらほら。

だから何だってんだよ…


「そんな急に誘っても断られるだけだぞ?散々迷惑かけてんだから、一旦ここは謝罪だけで終わらしとくべきだろ。」

「うるせー!何様だよ!」

「悠様だろうが!」


お決まりの返しを言って、悠はそのまま荷物をまとめて楽屋を出ていった。

一気にシンとなった楽屋の中で、俺はさっきまでのスマホの文字を消し謝罪の言葉と入れ替えた。

不思議と、迷いなく送信ボタンが押せてしまった。

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