(色葉side)


「はぁ…」

「どうしたん?ため息なんかついて」


そう話しかけてきたのは俺のグループ“LILY DOLL”のメンバーである灰原綾心。

綾に心と書いて“りょうしん”と読む。

メンバー唯一の関西出身。

楽屋のソファに座っていた俺に近づいてきてちょこんと隣に腰掛けた。


「いや、別に…」


そう。俺がため息をついた理由。

れんちゃんのことだ。

あれからもう5日が経とうとしているのに、やっぱり気になってしまう自分がいる。


「寝不足ならコーヒーでも飲みますか?」


そう言い紙コップを手に取るのは水無月璉。


「あ!俺も!俺も入れて!」

「わかったわかった。じっとしててください」


足をバタバタさせる綾心に璉は慣れた様子で声をかける。

そしてこれまた慣れた手つきでコーヒーを入れる。

はい、と手渡されたコーヒー。

俺のはブラックで、綾心のはカフェオレ。

璉はいつもコーヒーを入れてくれるからメンバーの好みも全て把握してくれている。

れんちゃんはどんなコーヒーが好きなんだろう。

そんなことを考えてしまった自分に我ながら少しひいて紙コップに口をつける。


「あっち!!!」


そのコーヒーが入れたてなのを忘れ躊躇なく飲んでしまった俺は、舌を軽く火傷した。

コップから少し零れたそれは俺の太ももへ落ち、熱くて思わず立ち上がる。


「あー!もー何してんの?
今日やっぱり変やわ、色葉」


私服で良かったね、なんてのんきなことを言いながら璉は自分の入れたコーヒーを一口飲む。


「良かねーよ!
もう取れねーじゃんこのシミ…」


これも全部れんちゃんのせいだよ…

なんて、とばっちりか。

俺は綾心にズボンを拭かれながら、またれんちゃんのことを考えひとり顔を赤くする。


「気持ち悪いよー、その顔」


横からそう投げかけてきたのはもう1人のメンバー。唐沢悠。

実は俺とは幼なじみで何かといつもライバルの位置にいた。


「は?」

「男に足拭かれて顔赤くするなんて気持ち悪いとしか言いようがないけど?」

「なっ…!」

今の状況を客観的に見ると確かに変な光景だったかもしれない。

いや、キモすぎる...

それを自覚して俺は余計に顔を赤くする。


「え〜?色葉俺のことそうゆーふうに見てたん?」


しゃがんでいる綾心に少し笑い上目遣いのままちょっと引かれた。


「待て、そういうんじゃなくて…!」

「うわー…」

「ちがっ、ほんとに違うんだって!」


その後、俺は2日間にわたってそのネタでいじられたのだった。