「年末年始って、何か予定ある?」
店長がそっとたずねてきたのは、年内最後の営業日だった。
今年最後のコーヒーを丁寧に淹れ、最後のお客様をお見送りし、閉店作業をしたのは、店長とわたしだった。
今年1年を大好きなひとと一緒に締められることが、嬉しくてたまらない。
しんとした店内に、わたしたちの作業音だけが響く。

「──年末年始ですか?」
「うん、ほら、渚ちゃん帰省しないって言ってたし。誕生日もどこにも行けなかったし」
「いえいえ、誕生日は最高の思い出ができました。本当にありがとうございました」
素敵な時間を思いだし、あらためて深々と礼をした。

麗子や未樹たち5人の企画により、わたしの二十歳の誕生日は、お店の奥半分だけ貸切にしてパーティーをしたのだ。わたしはあくまで「水鏡」のお客としてくつろぎ、楽しんだ。
いつのまに調整してくれていたのか、わたし以外のメンバーが全員出勤し、サプライズのケーキまで出してくれた。

大好きな友人たちに同僚たち、そして大好きな恋人。
何より嬉しかったのは、店長がみんなに挨拶してくれたことだ。渚ちゃんとお付き合いさせていただくことになりました、と。
目が合ったモリケンは、混じり気のない笑顔で拍手してくれた。