梅雨明けとともに、大学の前期試験が終わった。
夏休み。
アルバイトのシフト入れ放題ーーすなわち、好きなひとに会い放題だ。
開放感と高揚がわたしを包みこむ。

「え、渚ちゃんどこにも行かないの?」
ランチの仕込みをしていた店長は、心から驚いた顔をした。
「せっかくの夏休みなのに」
「はい。なので、シフトいっぱい入れてください。ぎっちぎちに!」
勢いこんで言うと、店長は笑った。
「あはは。じゃあ、ぎっちぎちに入れちゃおうかな」
ああ、その笑顔。毎日見ていたい。

「助かるわー、うちはほら、逆に子どもたちが休みに入っちゃうとあたしが働けないから」
主婦の並木さんに感謝されて頬を緩めていると、ドアベルがちりん、しゃらんと鳴り響いた。
「いらっしゃいませえ」
脊髄反射で入口に賭け寄ると、入ってきたのはフリーターの辻さんだった。
「ざんねーん。お客様じゃありませんでしたー」
例によってまた1ヶ月近く海外を回ってきた辻さんは、金髪のおかっぱという不思議な髪型になっていた。